Title: MacGuffin for the Pedestal
Year: 2025
Medium: Mixed media
Artist: Anri Fujii, Kohei Matsui
絵画のために額縁を吟味する行為は、単なる装飾的選択ではなく、作品の意味や価値を探る試行錯誤の過程である。この「絵と額縁」、「作品と台座」の関係性を、与条件と建築の相互作用に置き換えて考察するために本作はある。 現代はイメージが溢れ、あらゆるものに参照が付き纏う。この状況を肯定的に捉え意識的な制作態度へと変換する本展では、台座を単なる支持体ではなく、空間や時間と相互作用する動的な存在として捉える。ここでは、与条件として振る舞う世界や環境を作品、そこで振る舞われる建築的行為や人為的行為を台座として見立てることで、両者の関係性を通じて、前提と結果、時間と空間、そして情報と解釈の相互作用を探る。 本作では台座は単なる物理的な支持体ではなく、空間的・時間的な意味を帯びた構造体として機能する。3つの台座はその背の低い順に「Centroid(重心)」「Form(形態)」「Materiality(物性)」と名付けられ、それぞれが作品の異なる情報と文脈を開示する。これにより、台座は静的なオブジェクトではなく、作品との関係性の中で変形し、作品の意味を変容させる存在となる。台座の役割が作品によって変容することで、過去と現在の関係が可変的なものとして提示される。過去の形態や物質性が現在の作品に影響を与え、その逆もまた成り立つ。この関係性の可塑性は、建築における外在的文脈や、文学史におけるテクストの解釈と再解釈、現代における情報解釈のプロセスにも通じるものである。 本展における台座と作品の関係は、最終的には「マクガフィン」としての性質を帯びる。台座の存在が作品の意義を決定し、作品が台座を変容させることで、両者は互いの意味と解釈を繰り返し転倒させる。この循環する関係性に焦点を当て、台座そのものを制作するとともに、その台座のためのマクガフィンとして作品を位置づけることで、時間と空間における存在の根拠、その解釈の可能性を再考する契機とする。
©︎2025 OFFICE YUASA
オフィスユアサ
2019年設立。2022年まで湯浅良介個人の活動、2023年よりスタッフと協働し「TEMPO」(2023)、「MARIE」(2024)などを設計。これまではコラージュやデペイズマン、スケーリングなどの絵画表現を活用し設計を行う。現在は岡倉慎乃輔、藤井杏莉、松井康平と協働し商業空間や展示計画などクライアントワークをメインに活動を行う。本展では藤井杏莉、松井康平が協働作品「台座のためのマクガフィン」を発表。